« 須磨ヨットクラブ創立30周年記念「神戸まつりヨットレース」 | トップページ | 読者からの質問と回答 「得点ペナルティー:SCP 続編」 »

2009年4月22日 (水)

読者からの質問と回答 「得点ペナルティー:SCP」

RRS 44.3 Scoring Penalty

Yellow_big_4 読者からの質問:
> 一点教えてください。
> RRS44.3 得点ペナルティーは何のことを規定しているのでしょうか?
> いままで、RRS44.3(a)にある黄色旗を掲揚したのを、見かけたことはないのですが。

編集者による回答:
1. 2章の規則に違反したかもしれない艇は、帆走指示書で特に指示がない場合、「2回転ペナルティー」を履行することができ(規則44.2)、これを履行した場合、抗議において規則違反と判定されたとしても失格とはなりません(規則64.1(b))
2. ペナルティー履行のもう一つの方法が、この規則44.3 『得点ペナルティー』です。
これを適用する場合は、帆走指示書上に記載が必要です。
3. 2回転ペナルティーはよく知られていますが、得点ペナルティーは、日本国内ではあまり見かけません。(編集者が集めた情報では、2001年西宮開催J/24 World Championship と同じく西宮でのJAPAN CUPのロング・オフショア・レースくらいです)

4. それでは、どのようなレースで得点ペナルティーを採用するのか?ということですが、
①小型艇では、クラブ・レースとか地域大会といったチャンピオンシップに該当しない小規模のレースに限定されます。
(この項については、別途とり上げる予定です)
②大型艇では、チャンピオンシップを含め、特にオフショア・レースでは頻繁に採用されています(特に海外のレースにおいては)。
5. 履行の方法は、第2章の規則に違反したかもしれない艇は、インシデント(ケース)の後、2回転ペナルティーを行うことなく、ただちに黄色旗を掲揚し、フィニッシュするまで掲げ続け、帆走します。そして、フィニッシュ後レース委員会に相手艇を報告しなければなりません(規則44.3(b))。
尚、抗議する側の艇は、通常の抗議と同じように“プロテスト”の声を掛け、赤色旗(通常 6m以上の艇は要求されている)を掲げます。

6. レース後、規則44.3(c) に基づき、成績の変更がなされます。
すなわち、帆走指示書に順位の数が記載されていない場合は参加艇数の20% 、例えば100 艇参加のレースで、その艇(黄色旗を掲げた艇)が12 位でフィニッシュした場合、12位+(100艇X20%)=32位となります。90位でフィニッシュした場合は、計算では90位+(100艇X20%)=110位となりますが、この場合はDNFと同じ101位が与えられます。他艇の得点は変更しない。
7. 注意すべき点は、ペナルティーに関する記述は「帆走指示書の条項」に該当しますが、おおかたの艇が黄色旗を常備していないため、得点ペナルティーを適用するレースでは事前に「レース公示」においてその旨を告示することが薦められます。また黄色旗が市販されていないため、
I 旗(アイ旗)で代用可とするのが一般的です。

さて、『なぜ2回転ペナルティー以外にこのような規則があるのか?』ですが、
その根拠はRRSには記載がなく、その他解説書を調べても見つかりませんでした。
ただしRRSの前身である IYRU Racing Rules 時代から存在し、永年、大型艇、またオフショアのレースではよく使用されている規則です。

=== 得点ペナルティーの根拠 (私見) ===
1. 大型艇のレースに適用されることから、ペナルティー回転中の艇と帆走中の艇とのトラブル、接触等を防止するための「安全策」として。
2. 2回転ペナルティーによる「大幅な順位ダウンの縮小策」として。

インシデントが発生した場合、それに関わった艇は、規則に違反したか否かの判断を迫られます。違反したと判断した艇は、通常はただちに2回転ペナルティーを履行しなければなりません。自らは違反していないと判断し、そのまま帆走を続けた場合、それに納得しない相手艇から“プロテスト”の声が掛かり、レース終了後には、抗議を提出されることが予測されます。抗議審問において、規則違反と判決された場合、失格(DSQ)という"極めて苛酷"な結末を覚悟しなければならないかも知れません。
"2回転による順位のダウンを免れる"か、"失格か?"の判断を瞬時にしなければならない訳です。(過激な表現ですが、まさに天国と地獄の分かれ道の選択です)
大型艇(特にOne Design Class)のレースでは、2回転ペナルティーは致命的であり、場面(特にスタート直後から第1マークの間の艇が密集する場面)によっては回転の結果上位艇が最下位まで落ちてしまう可能性があります。昨年のX35-One Design全日本選手権の例を引けば、第1風上マークで1位の艇が違反を犯し、そこで2回転ペナルティーを履行したならば確実に最下位に落ちるほど各艇の回航順位は接近していました(J/24レガッタでも同様です)。また35フィートの艇が、第1マーク周辺の密集の中で回転することは他の艇も含め極めて危険なことと云えます。

そこで、『得点ペナルティー』が登場する訳です。

もし、得点ペナルティー(黄色旗ペナルティー)が適用されているレースで、違反したかどうか判断が難しい場合、ある意味で"保険"を掛ける意図もあるかも知れませんが、黄色旗を掲揚することで、抗議をされ失格となることはありません。上記のX35-ODの例では10艇しか参加がなかったため、1位+(10艇X20%)=3位となり、1位が3位に落ちるだけで、致命的な順位ダウンではなくなります。
  
① 得点ペナルティーを適用するには10艇では少し少なすぎ(甘すぎ)ますが、50艇くらいが参加するレースでは、50艇X20%=10位ダウンはリーズナブルで、「大幅な順位ダウンの縮小策」また「安全策」を兼ねていると考えられます。
② 因みに、J/24クラスの「スタンダード帆走指示書」では、世界選手権・大陸選手権においては得点ペナルティーの適用が指定されています。

③ J/24 World Championship 2001 の帆走指示書
14 ペナルティー方式
14.1 得点のペナルティー、RRS44.3をここで変更されたとおり、適用する。
14.2 レース中に第2章の規則に違反したかもしれない艇は、RRS44.3(a)に従って、たて150mm 以上で横200mm 以上の黄色旗 (
I 旗が認められる)を、バックステイのアジャスターの辺りから、はっきり目立つように掲げなければならない。
14.3 RRS44.3(a)の報告の要件に加え、上記の艇は、レガッタ・デスクで入手できる“得点ペナルティー承諾書”に違反の書面による申告を提出し、帆走指示書16.3に記載されている抗議締切時間内に、レガッタ・デスクのジュリーの代表者に提出しなければならない。

④ 2008年全日本外洋ヨット選手権大会(JAPAN CUP 2008)の帆走指示書
14 ペナルティー
14.1 ショートオフショアレースフィニッシュ以後の、ロングオフショアレースにおいては、規則44.3「得点のペナルティー」を適用する。
14.2 ショートオフショアレース、ロングオフショアレース兼用区間においては、規則44.3 「得点のペナルティー」を適用する。ペナルティーは参加艇数の20%の整数(小数点以下第一位を四捨五入)とし、ショートオフショアレース、ロングオフショアレース双方の得点に加算される。また この区間の失格も双方のレースに適用される。


〈参考〉 「回転ペナルティー」に関連しては、

Sail Melbourne 2008 Asia Pacific Regatta
(Formerly; Olympic Classes Regatta)
14th January - 19th January 2008, Sandringbam, Melbourne, Australia
Sailing Instructions:
16 PENALTY SYSTEM
16.2 For the RS:X, 49er, and Tornado class(es) rules 44.1 and 44.2 are changed so that only One turn, including one tack and one gube, is required.


にあるように、RS:X, 49er, Tornadoのような高速艇の公式大会では、2回転ペナルティーを「1回転のみのペナルティー」に変更しています。これもまた上記「安全策」と「大幅な順位ダウンの縮小策」を講じているものと考えられます。

<続編を予定>

|

« 須磨ヨットクラブ創立30周年記念「神戸まつりヨットレース」 | トップページ | 読者からの質問と回答 「得点ペナルティー:SCP 続編」 »

Learn the RRS 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 須磨ヨットクラブ創立30周年記念「神戸まつりヨットレース」 | トップページ | 読者からの質問と回答 「得点ペナルティー:SCP 続編」 »