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2009年10月14日 (水)

抗議書シリーズ4 「タイムリミットの解釈」

抗議書シリーズ4「タイムリミットの解釈」 2010-03-24, 2010-05-21一部修正(赤字部)

J24_2009_4_page1インシデントの詳細:
Sailing Instructions 14 のタイムリミットの項で「タイムリミットはスタート信号後90分、または先頭艇のフィニッシュ後30分の何れか長い方とする」とあり、レース自体のトップ艇フィニッシュ・ラインをきったのが93分後だったので、後半の文章の「先頭艇のフィニッシュ後30分」の方が有効になると判断し、ノーレースになるのはSailing Instructionsを無視した形になるのでレース委員会に救済の要求をします。

認定した事実:
J24_2009_4_page2 ① 第7レースのスタート信号時刻は11:55であった。
② スタート信号後90分の13:25に、R/Cはフィニッシュ・ラインを消滅した(オレンジ旗を降下)。
③ その時点でフリートの先頭を帆走していた艇4907(注:救済要求艇)は13:28に、残っていたR/C信号艇とピンエンドのブイの間のライン(先に消滅したフィニッシュ・ライン)を横切った。
④ 他のレース艇も、同様に横切り、R/Cはすべての艇の着順を記録した。

結論と適用規則:
① R/Cが帆走指示書に基づいてスタート信号後90分の13:25にフィニッシュ・ラインを消滅し、レースを中止したことは、規則35の最後の文に従っている。
② 艇4907を含むすべての艇は、定義:フィニッシュをしていない。なぜなら、フィニッシュ・ラインはすでに存在しなかった。
③ 帆走指示書14にある、「タイムリミットはスタート信号後90分、または先頭艇のフィニッシュ後30分の何れか遅い方とする」の表現は、先頭艇がタイムリミット内にフィニッシュすることを条件とするものである。
④ 当帆走指示書は、付則L, 15.1 および 15.2に従ったものであり、”特異なもの”ではない。

判 決:
救済 : 与えない  X 

(解説)
1. タイムリミットの解釈に関わる救済要求である。

帆走指示書のタイムリミットの項には「タイムリミットはスタート信号後90分、または先頭艇のフィニッシュ後30分の何れか長い方とする」とある。

“何気なしに読む”と何が問題なのか? と思われるかも知れない。しかし“よく読んでみる”と「タイム・リミット」とは何に、どの艇に、対して適用されるのか? の疑問が生じかねない微妙かつ曖昧な日本語表現である。

2. RRSにおけるタイム・リミットの定義
RRSに「タイム・リミット」の記述があるのは、規則32.1最終分、規則35、規則90.3(a)の3箇所だけである(抗議関係の条項は除く)。
この規則を熟読すれば、「タイム・リミット」は“コースを帆走してフィニッシュした艇(特に先頭艇)を対象として定義されたもの”であることが分かる。
旧い規則(
RRS1997-2000以前)、または従前からの慣習的な意味合いから、タイム・リミットをレース全体の制限時間(最長時間、打切り時間)として用いたり、解釈するのは“誤りである” ことを認識しなければならない。
これらの誤解と、帆走指示書の微妙な日本語表現が解釈誤りを誘発したこととが重なり、救済要求の根拠となったものであろう。救済要求に一理なしとは言い切れない。
とは言え、抗議判決と重複するが、先頭艇が(すなわち
1艇も)タイム・リミット内にフィニッシュしなかったのでレースを中止したR/Cの処置は、規則35に従い適切である。また、R/Cには規則62.1(a)にある不手際はなかったと、救済要求を却下したプロテスト委員会の判決も適切である。

 規則35: タイム・リミットと得点
タイム・リミットがある場合、
1艇が規則28.1に定められたコースを帆走して、タイム・リミット内にフィニッシュした場合には、レースが中止された場合を除き、フィニッシュしたすべての艇はフィニッシュの順位に従って得点が記録されなければならない。タイム・リミット内に1艇もフィニッシュしない場合には、レース委員会はレースを中止しなければならない。

 規則32.1(最終文): スタート後の短縮または中止
iただし、タイム・リミットがある場合には、
1艇がコースを帆走して、タイム・リミット内にフィニッシュした後は、レース委員会は、そのレースまたはシリーズにおけるすべての艇への影響を考慮しないで、レースを中止してはならない。

 規則90.3(a): 得点
(a) レース委員会は・・・・・
付則Aの規定に従って、レースまたはシリーズの得点を記録しなければならない。
レースが中止にならず、1艇が規則28.1に従いコースを帆走し、タイム・リミットがあるならそのタイム・リミットの前にフィニッシュする場合には、たとえその艇がフィニッシュ後リタイアするかまたは失格しても、そのレースの得点を記録しなければならない。


 規則62.1: 救済
救済要求または救済を考慮するとのプロテスト委員会の決定は、レースまたはシリーズにおける艇の得点が、その艇の過失ではなく、次のいずれかの理由により明らかに悪くなったという主張または可能性に基づくものでなければならない。
(a) レース委員会、プロテスト委員会または主催団体の不適切な処置または不手際。


3. RRS2009-2012 付則L(帆走指示書)に記述されたタイムリミット、
       「タイムリミットは、スタート信号後90
分、
         先頭艇がコースを帆走して、フィニッシュ後
30分以内にフィニッシュしない艇は、審問なしにフィニッシュしなかった(DNF)と記録される」は、標準的かつリーズナブルなものである。

4.
しかし、レースの性格に合わせ帆走指示書において下記のような「バリエーション」を採用することがある。
        ① タイムリミットは、スタート信号後
90
分とする。 
        ② 先頭艇がコースを帆走して、フィニッシュ後
30分以内にフィニッシュしない 艇は、DNF
と記録される。
    ③ 
タイムリミットは、スタート信号後90分。
スタート信号後90分、先頭艇がコースを帆走してフィニッシュ後90分、の何れか早い方の時刻までにフィニッシュしない艇はDNFと記録される。
     ④ タイムリミットは、スタート信号後90スタート信号後90分、先頭艇がコースを帆走してフィニッシュ後30分、の何れか遅い方の時刻までにフィニッシュしない艇はDNFと記録される。

  Time_limit_2 
当然のことながら、それぞれにメリット/デメリットがある。
    付則L 最長時間が分かる。
        ① 最長時間が分からない。付則Lに比べ相当甘い。
        ② 最長時間が分からない。中止しない限りレース成立。
        ③ 最長時間が分かる。付則Lに比べ厳しい。
        ④ 最長時間が分かる。付則Lに比べ甘い。

5. 「タイムリミットの比較・関連規則・帆走指示書実例」をまとめた資料を作成しているので、参照されたい。


タイムリミットの比較pdf Dloadnowbutton「time_limit1.pdf」をダウンロード   

抗議書 左ページ Dloadnowbutton_2「j24_2009_4_page1.jpg」をダウンロード   
抗議書 右ページ Dloadnowbutton_3「j24_2009_4_page2.pdf」をダウンロード

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