抗議書シリーズ5 「2回転ペナルティーの履行」
抗議書シリーズ5「2回転ペナルティーの履行」
インシデントの詳細:自艇A1はスターボード・タックで帆走していた所に、被抗議艇B1がポートで接近して来た。その後A2, B2の状態となり、自艇は接触を避けるためタック、‘抗議’と声をかけ、B旗を掲げた。
認定した事実: ① インシデントが発生した時点はスタート数分後、風速は約10ノットであった。
② 艇6352(35フィート)はスターボード・タック、艇5555(40.7フィート)はポート・タックで、両艇クロースホールドで、コリジョン・コースを帆走していた。
③ 両艇間が10mの距離に近づいた時、最初に艇6352がポート・タックにタッキングし、次に艇5555がスターボード・タックにタッキングし、両艇は離れた。
④ その直後、艇6352は、別のスターボード・タック艇を避けるため、再びスターボード・タックにタックし、両艇は同一のポート・タック、艇6352はクリア・アスターン、艇5555がクリア・アヘッドの関係になり、徐々に離れて行った。
⑤ 艇5555は、少なくとも3分以上経過した後に、2回転をした。
⑥ その時、両艇の周辺には他の艇はいなかった。
結論と適用規則 :
① 艇5555は規則10に違反した。
② 艇5555は2回転をおこなったが、規則44.2のペナルティーを履行したことにはならない。
なぜなら、規則44.2では「艇は、インシデントの後できるだけ早く他艇から十分離れた後、・・・・・、回転を行う」とあり、インシデント後3分間は、当規則にある“できるだけ早く(as soon as possible) 離れた後”の条件に該当しない。
判 決:
抗議 : ...3.....レースにおいて艇 (複数)5555.を失格とする
(解説)
1. 反対のタック(規則10)の抗議である。
インシデントの審問に関しては両艇の証言が一致し、事実認定に至った。
2. 2回転ペナルティーの履行
被抗議艇5555の証言:
インシデントの後、自ら第2章の規則に違反したかもしれないと考え、2回転を履行したと証言した。
抗議艇6352の証言;
インシデントの直後から艇5555が回転をするかどうかのウオッチを続けたが、艇は徐々に離れて行き(艇速に差があるため)、遥か彼方で2回転らしきものを見たが、その回転がこのインシデントに関わるものか、または別のインシデントのものかを確認できなかったので、抗議書を提出した。
3. 結論
インシデントが発生した時点で風速は約10ノットあった。
艇5555は、両艇が最初にミートした後一旦離れた。
その後同一タックになって、再び離れていった後の3分間は距離にして500mを超えるものである。
規則44.2にある回転ペナルティーは、ただ単に回転を行えば良いというのではなく、「インシデントの後できるだけ早く他艇から十分離れた後、・・・・・、回転を行う」と時間および場所をも規定していることに留意されたい。
抗議書 左ページ :「x35_2009_page1_save0047.JPG」をダウンロード
抗議書 右ページ :「x35_2009_page2.pdf」をダウンロード
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