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2010年9月13日 (月)

RRS第2章の規則はどの時点から適用されるのか?

RRS2章の規則(艇が出会った場合:航路権規則)はどの時点から適用されるのか?<RRS2009-2012 Version>

2章の前文は『第2章の規則は、艇がレース・エリア内、またはその近くを帆走していて、レースをしようとしているか、レース中か、またはレースをしていた艇間に適用する。ただし、レース中でない艇は、規則23.1の場合を除き、第2章の規則のいずれかに違反したとしてもペナルティーを課せられることはない。』と述べている。

まず「第2章の規則が適用されるのはレース中であり、レース中ではない時には適用されない、準備信号が発せられた時点からである」と大まかに解釈するのは、それなりに正しい。
それなれば、レース中でない艇は規則に違反しようが、しないが同じことなのか?
次の文では『ただし、レース中でない艇は、・・・・、第2章の規則のいずれかに違反したとしてもペナルティーを課せられることはない。』とある。
違反したとしてもペナルティーを課せられない、とは何を意味するのか?違反とペナルティーとはどう違うのか?

すなわち、違反した艇には何のペナルティーも課せられないので、違反しなかったと同じことなのか?(やり得)
また、違反した艇の行動により傷害または物理的損傷を被った艇には何の救済も与えられないのか?(やられ損)
この疑問に答える2つの事例を、解説します。

まとめ:第2章の規則はレース中の艇だけに適用するのではなく、“レースをしようとしている艇”、“レースをしていた艇”にも適用することを再確認してください。思わぬ落とし穴に落ちないために!

今回の解説は“レースをしようとしている艇”をとりあげますが、次回は“レースをしていた艇”の例を紹介する予定です。


Qa2010_029j11908811_jpeg 事例1: ISAF Racing Rules Questions and Answers Service最新版
Q&A 2010-29: Redress for incidents that happen before the warning signal (予告信号の前に起きたインシデントの救済)

〈なお、これまでも紹介してきたQ&Aはその前書きにもあるように、RRS, Case Book, Call bookとは異なり、「回答はISAFの正式の解釈や説明ではない」ことに注意されたい、一部に疑問符の付く回答あり。〉

J011 Q&A 2010-29 Published: 10 August 2010
質問 
レースの予告信号の2-3分前、レースでスタートしようとしている2艇間にポート・スターボードの衝突があった。スターボード艇に重大な損傷があり、その艇は損傷のためそのレースでスタートすることができなかった。 
スタートすることができなかったレースで、その艇は救済の資格があるか?

回答はYESですか?それともNOでしょうか

回答 
はい(YES)。 第2章の前文は、第2章の規則はレースをしようとしてレース・エリア内にいる艇に適用する、と述べている。規則62.1は、レースまたはシリーズにおける艇の得点が、その艇の過失ではなく、第2章の規則に違反した艇の行動により被った傷害または物理的損傷によって、明らかに悪くなったことが証明できた場合、救済が与えられることを認めている。 
前文はまた、損傷を引き起こした艇は、規則23.1を除き、第2章の規則のいずれの違反に対してもペナルティーを課せられることはない、と述べている。

解説
抗議書の「結論と適用規則・判決」はつぎの通りとなるだろう。
1.インシデントが発生した時点は予告信号の2分前であり、両艇はスタートしようとしていた。
2.スターボード・タックであった航路権艇は、何ら規則に違反せず、物理的損傷を被ったため、規則62.1(b) に基づき救済が与えられる。 
3.ポート・タック艇は、規則10および規則14に
違反した。しかしながら、レース中ではなかったため第2規則の前文に従いペナルティーは課さない。

すなわち、レースの開始前に起きたこのインシデントにおいて、スタートできなかったターボード・タック艇には救済の得点(例えば全レースの平均得点)が与えられ、規則に違反したポート・タック艇には失格(DSQ)等のペナルティーは課せられず、そのままレースを続けることができるし、フィニッシュ得点が与えられる。
頻度が高くはないが、幾度か見かけた場面です。

Q&A 2010-29 Dloadnowbutton pdf: 「qa2010_029j119088.pdf」をダウンロード



Part2_protest_jpeg事例
2: 編集者が海外のレースで救済審問をした実例

Q&A に酷似していますが、1か所だけ大きな違いがある例です。すなわち、Q&Aではポート・タック艇が規則違反し、スターボード・タック艇はなんらの規則に違反しなかったが、この例では、スターボード・タック艇も規則14に違反している。

判決がどのように異なるのか?考えてみてください。

抗議書の「結論と適用規則」はつぎのとおり。

CONCLUSION AND RULES THAT APPLY:

1. 468 on port tack did not keep clear of 447 on starboard tack. And also she did not avoid contact.
2. 468 broke rule 10 and 14. But she shall not be penalized under the preamble of Rule Part 2. 
3. 447, the right of the way boat, did not act to avoid contact with 468 when it was clear that 468 was not keeping clear and the contact caused damage.
4. 447 broke rule 14. But she shall not be penalized under the preamble of Rule Part 2.
5. 447’s score has been, through fault of her own, made significantly worse. Then the redress of 447 is not given under rule 62.1.

1. ポート・タックの468はスターボード・タックの447を避けていなかった。また468は接触を回避しなかった。
2468は規則10および14に違反した。しかし、レース中ではなかったため2規則の前文に従いペナルティーは課さない。
3447、航路権艇、は468が避けていないのが明らかだった時に、468との接触を回避する行動をとらなかった、また接触は損傷を伴った。
4.よって447は規則14に違反した。しかし、レース中ではなかったため2規則の前文に従いペナルティーは課さない。
5447の得点は、自身の過失で明らかに悪くなった。それゆえ、447の救済は規則62.1の要件を充たさないため与えられない。

すなわち、レースの開始前に起きたこのインシデントにおいて、両艇とも規則違反したがレース中ではなかったため第2規則の前文に従いペナルティーは課さない。
しかしながら、損傷が大きくスタートできなかったターボード・タック艇には、過失(規則14違反)があったため、救済は与えられない
一方、ポート・タック艇は、そのままレースを続けることができ、規則に違反したが失格(DSQ)等のペナルティーが課せられず、フィニッシュ得点が与えられる(注:重大な損傷を起こしたが、レース中でないため、規則44.1(b)も適用できない)。
不合理・不公平かもしれないが、これが規則である。
くれぐれも接触には気をつけなければなりません。

抗議書全文 Dloadnowbutton_2 pdf:「part2_protest.pdf」をダウンロード  

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RRS2009-2012 関連規則
2章の前文: 第2章の規則は、艇がレース・エリア内、またはその近くを帆走していて、レースをしようとしているか、レース中か、またはレースをしていた艇間に適用する。ただし、レース中でない艇は、規則23.1の場合を除き、第2章の規則のいずれかに違反したとしてもペナルティーを課せられることはない。
定義:レース中: 艇がその準備信号から、フィニッシュしてフィニッシュ・ラインとフィニッシュ・マークを離れるまで、もしくはリタイアするまで、またはレース委員会がゼネラル・リコール、延期、もしくは中止の信号を発するまで、その艇はレース中であるという。
規則23.1: 常識的に可能な場合には、レース中でない艇は、レース中の艇を妨害してはならない。
規則62.1 救済要求または救済を考慮するとのプロテスト委員会の決定は、レースまたはシリーズにおける艇の得点が、その艇の過失ではなく、次のいずれかの理由により明らかに悪くなったという主張または可能性に基づくものでなければならない。
(a) ・・・省略
(b) 2章の規則に違反した艇、または避ける必要があるレース中でない船舶の行動により被った傷害または物理的損傷。
(c)(d) ・・・省略
規則44.1:ペナルティーの履行
レース中に2の規則に違反したかもしれない艇は2回転ペナルティーを履行することができ、規則31に違反したかもしれない艇は1回転ペナルティーを履行することができる。帆走指示書は、得点ペナルティーまたはその他のペナルティーの適用を規定することができる。ただし、
(b)その艇が傷害または重大な損傷を起こしたり、違反により、そのレースあるいはシリーズにおいて著しく有利となった場合には、その艇のペナルティーはリタイアすることでなければならない。

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