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2011年1月29日 (土)

読者からの質問と回答 「抗議審問の利害関係者」 - Interested Party

Interested_party_jpeg 読者からの質問:
>今回メールさせていただくのは、ある地方のレースにおける抗議審問のことです。
>私たちのチームの選手が抗議に呼ばれたのですが、審問をしていただいたプロテストのメンバーの一人に、抗議の相手選手が所属するチームのコーチが入っていました。ただしその審問には選手だけが出席したため、後でそのことを知った次第です。この審問自体についてあれこれ云う積りは毛頭ありませんが、どうしても相手が有利になったような気がしてなりません。


>これはRRSの抗議の条項に則っていないのではないでしょうか?
>今後のためにどのようにしたらよいのか、教えていただけないでしょうか?

編集者による回答:
(1) この質問の答えは、RRS定義にある「利害関係者」を理解することによって解決します。
「利害関係者」がRRSに登場するのは“5箇所だけである(定義:利害関係者、規則60.2、規則60.3、規則63.4、規則71)。今回の抗議審問に直接関係するのは「定義:利害関係者」と「規則63.4」である。

特に規則63.43つセンテンスに分かれており、各々に重要なポイントがある。
定義:利害関係者
プロテスト委員会の判決の結果、有利となるか、不利となる者、または判決に対して個人的に密接な利害関係を持つ者を利害関係者という。

63 審問

63.4
利害関係者
プロテスト委員会のメンバーが利害関係者である場合には、それ以降、その審問に参加してはならないが、証人として出頭することはできる。
プロテスト委員会のメンバーは、自らの利害関係の可能性に気付いたらできるだけ早く表明しなくてはならない。
プロテスト委員会のメンバーが利害関係者であると考える審問の当事者は、できるだけ早く異議を申し立てなければならない。

(2) 規則63.41:プロテスト委員会のメンバーが利害関係者である場合には、それ以降、その審問に参加してはならないが、証人として出頭することはできる。

初めに、利害関係者とは何を指すのか?を理解しなければならない。
答えは定義:利害関係者に記載されている。しかしながら、これでは分かったようで、分からない。
具体的にはどのような関係者を云うのか? その答えは、RRSのどこにも述べられていない。

ISAF発行の他の資料も調べてみたが、唯一 ISAF Judges’ Manual 〈後述〉の9.抗議審問の項に「ジャッジの国籍」が述べられているだけで、これ以上具体的なものは見当たらない。

US Sailing, Judges Training Workshop資料に次の記述がある。
- Interested Party 利害関係者
Competitor 他の競技者
Personal, business or family tie to a competitor 競技者と繫がる個人、会社関係者、家族・親族
Significant adverse relationship with a competitor 競技者と明らかな敵対関係にあるもの
Interest in a competing boat (including a syndicate) 競技艇の関係者(会社を含む)
Contributions to a syndicate or campaign 会社またはキャンペーンへの出資者

- Not an Interested Party 非利害関係者
Race Committee レース委員会メンバー
Citizenship 一般人
Membership in an OA or club 主催団体もしくはクラブのメンバー
Giving testimony 証言者

クラブのメンバーが利害関係者とならないのは、例えば2つのクラブまたは2つの学校による対抗戦において、その一方が主催団体を務める場合、その主催団体が利害関係者とされたらならば大会そのものが成立しなくなる訳で、自明の理であろう。
また国籍については、数カ国からの選手が参加する国際大会においても3~5名の少数ジャッジでプロテスト委員会が構成される実態を見れば、致し方のないことと云えよう。
(ただしサッカー等資金が潤沢なメジャースポーツでは決して当然ではなく、本日決勝が行われるアジア・カップ(Asian Cup)において、例えば日本対中国戦の主審・副審(レフリー)が中国人であることはあり得ないのも、これまた常識である)

これらから推量できるように「代表的な利害関係者」として、家族・親族(Family)コーチ(coach)雇用主・被雇用者(Employer, Employee)スポンサー(Sponsor)4つが挙げられている。
だだし最終的にはプロテスト委員会の判断に委ねられる。


規則63.41は、『プロテスト委員会のメンバーが当事者(抗議者・被抗議者)の家族・親族、コーチ、雇用者・被雇用者、スポンサー等である場合、その審問に参加してはならない』と言い換えるのがよくある例である。

(3) 規則63.42:プロテスト委員会のメンバーは、自らの利害関係の可能性に気付いたらできるだけ早く表明しなくてはならない。

この第2文は、RRS2009-2012から新しく追加されたものである。従前からあった第3文の当事者からの申し立てのみでは、「当事者は気付いていないが、プロテスト委員会のメンバーは気付いているケースにおいて、当事者からの申し立てがなかったためそのまま放置した」措置がとられたとすれば、一方的かつ公正さを欠くものであった。今回の改訂は当然のことである。

今回の質問にあるように、もしも審問したプロテスト委員会のメンバーがチームのコーチであった場合は、まず本人自らが「抗議の当事者が所属するチームのコーチであること」をプロテスト委員会および抗議の当事者に表明し、その可否を問わなければならないのがプロテスト委員会のメンバーとしての義務である。 
それを欠いたとするならば、明らかに規則63.4に違反している。

個人的な見解であるが、敢えて火中の栗を拾う”ようなことは避けるべきであり、自ら先立ってプロテストメンバーからの辞退を申し出るのが「ジャッジとしての矜持」であろう。

(4) 規則63.43:プロテスト委員会のメンバーが利害関係者であると考える審問の当事者は、できるだけ早く異議を申し立てなければならない。

この第3文は、従前からの規則である。また付則Mプロテスト委員会に対する提言には次のような記載がある。
M2 プロテスト委員会のメンバーが、利害関係者でないこと。当事者にプロテスト委員会のメンバーに異議があるかどうかを尋ねること。

プロテスト委員会は審問の前に異議があるかどうかを尋ねなければならず、当事者は異議があればその理由・根拠を添えて申し立てをおこなうべきであったが、今回の質問では「ただしその審問には選手だけが出席したため、後でそのことを知った次第です」とあるので、ここでは該当しないことになる。
ただし大会中であれば、規則66 〈後述〉にしたがい審問再開の要求は可能であったし、大会終了後ならば規則70 〈後述〉に則り上告すら可能である。質問の事実は、この両規則の要件を充たしていることを申し添えたい。
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ISAF Judges’ Manual  Edition 5 December 2008
9. The Protest Hearing

9.1 Jurisdiction, General Principles, Preparation
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The members of the protest committee should be introduced by name to the parties to the protest. If a party objects to any member, the chairman should ask the reason, and if the objection meets the definition of interested party, replace the member, although they may still participate as a witness. If not valid, the objection should be overruled.

It is very rare for there to be a legitimate reason for objecting to a member of a
protest committee formed by International Judges; nationality in itself is never a legitimate reason.
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9. 抗議審問
9.1 権限、全般の原則、準備
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プロテスト委員会のメンバーは、抗議の当事者に氏名を紹介するのがよい。
当事者があるメンバーに異議のある場合には、委員長はその理由を尋ね、異議が利害関係者の定義を満たしている場合には、メンバーを替えるとよい、とは言えそのメンバーはそれでも証人として加わることはできる。根拠のない場合には、異議を却下するとよい。

インターナショナル・ジャッジによって構成されたプロテスト委員会のメンバーに異議を唱えることに対し、正当な理由があるのは非常にまれであり、国籍自体は、決して正当な理由ではない。 -----

RRS
規則66 審問再開

プロテスト委員会が、自ら重大な誤りを犯したかもしれないと判断した場合、または妥当な時間内に重要な新しい証言が得られた場合、審問を再開することができる。規則F5に基づき各国協会より要求された場合、プロテスト委員会は審問を再開しなければならない。審問の当事者は、判決を通告されてから24時間以内に審問の再開を求めることができる。審問が再開される場合、プロテスト委員会のメンバーの過半数は、可能な場合には、元のプロテスト委員会のメンバーとしなければならない。

規則70 各国協会への上告と要請
70.1 上告の権利が規則70.5に基づき否認されていない場合に限り、審問の当事者は、プロテスト委員会の認定した事実を除く判決または手順に対して上告することができる。

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