チームレース・シリーズ その1 (Team Racing 1/2)
先日あるヨットクラブから『チームレース』の講習依頼を受けました。クラブのメンバーが予期もしていないのに海外でのチームレースに参加することになったがその知識が余りにもないとの事情によるものでした。
日本におけるチームレース活動は極めて低調と言っても過言でなく、公式のレースが行われているのは、編集者の知るところでは、オプティミスト・チームレース全日本選手権とISAFチームレース世界選手権日本代表予選会くらいしかありません。
ヨットレーサーが身につけなければならない三つの要素として、
①チューニング(スピード)、②ボートハンドリング(操船技術)、③タクティクス(戦術)
が挙げられる。
スピードのみに関心が集中しがちのなかで、チームレースは、ルールの理解も含めての「タクティクスとボートハンドリングの訓練」に最適であると言われている。
日本で発行されている数少ないチームレースの教本『チームレース』(江の島ヨットクラブ発行)の中で、著者である松本冨士也さんは次のように述べられている。
『1レースに1-2時間も掛かるフリートレースに勝つために、日本の選手たちはスピード(チューニング)のみに関心が集中しており、実力の伯仲した競争相手に混じって忍耐強く勝ち抜く技術に劣っており、レース海面の中央部分より左右を単独で走る傾向が強いと言われている。
欧米のセーラー達は学生時代にたっぷりチームレースで鍛えられており、セーリングを知的ゲームとしてとらえており、種々の工夫をし、分析し、新しいアイデアをだしている。人から教えられた知識としては知ってはいるが、実際に身についていない、実行しない日本人の傾向の反省材料である。』
『少子化が進み子供の頃から良い艇と良いセールを欲しがる甘えたセーラー達にとって、貸与された艇を乗りこなし、またFor the teamとしての団体訓練を受けるのにも、上級者が下級者を指導するにも、チームレースは適している。』
編集者もチームレースに何度か携わったが(主に海外におけるオプティミスト級)、艇対艇の密着度の濃さに由来する迫力に圧倒された反面、たまたま参加していた日本チームと欧米チームの実力格差に唖然とした経験がある。これは日本における環境から致し方ないことである。
今回折角の機会を得たので、チームレースのまとめをシリーズとして(2~3回に分け)紹介してみたい。
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チーム・レーシング(1/2) チーム・レーシングは、チームズ・レーシングとしても知られている、ヨットレーシングの人気ある形式のひとつである。フリート・レーシングが艇の個人成績に基づいて記録されるのに対し、チーム・レーシングにおいては、2または3または4艇で構成されるチームが一緒に競争する。フリート・レーシングと同様に、低得点記録方式が用いられる。艇はレースでフィニッシュした順位に基づいて得点が与えられる。例えば、1位でフィニッシュした艇は1点を獲得、2位でフィニッシュした艇は2点を獲得、等々となる。チーム・レーシングにおいて、勝利チームは、各チームのすべての艇の順位を合計加算して決定される。最も少ない得点のチームが勝利する。
目次
1.チーム・レーシングの戦術
2.チーム・レーシングの現況 3.勝利/敗北の組み合わせ
3.1 2艇のチーム・レーシング
3.2 3艇のチーム・レーシング
3.3 4艇のチーム・レーシング
1. チーム・レーシングの戦術
チーム・レーシングは、艇のスピードの必要性に良いチームワークとコミュニケーションとを組み合わせた、セールボート・レーシングの極めて戦術的で技術的な分野である。
3艇チーム(最も一般的な形式)の次の場面を考えてみよう。1艇が1位でそのチームメイトが5位と6位の場合、チームの全体得点は、フィニッシュに基づき1 + 5 + 6 = 12 点である、一方相手は2 + 3 + 4 = 9 点となる。それゆえにレースに勝利するためには、1位の艇は、他のチームの進行が同じチームメイトを追い越そうとするのを妨げるような方法を試み、艇を操船しなければならない。艇は優位に立つため、セー リング競技規則(RRS) 、付則Dを含む、を用いることによってこのようにできる-例えば、相手が針路から外れなければならない、または相手が避けている艇である、といった方法によって自分自身の位置取りをする。ある艇が、他の艇がセーリング競技規則に違反したと思った場合、プロテストの声を掛けることができる。抗議された艇が1回転ペナルティーにより自分自身で免罪しない場合は、抗議する艇は“アンパイア”と声を掛けることができる。その場合、オン-ザ-ウオーター・アンパイアは、ほとんど直ちに判定をし、規則違反をしたと信ずるいずれかの艇に2回転ペナルティーを課す。
チーム・レーシングには、2つの主要な“動き”がある、“パス・バック”とマーク・トラップ”である。
パス・バックの目的は、相手チームがカバーしている艇のために、カバーしている艇を方向転換させるか、その艇より速く前方に帆走させるか、のいずれかにより、相手チームの艇を遅くらせる ことである。パス・バックは風上に帆走している3艇が関わることになる。最も風上の艇、最も風
下の艇が同じチームである。パス・バックは、風上艇が中間艇の風をカバーする位置に帆走する場合に開始される、最も風下の艇が、うまくいけばより速く帆走できるように、または中間の艇が同時にタックできないようにしてタックできるようにする。
マーク・トラップはややより複雑である。マーク・トラップは、相手チームの艇が帆走しなければならない位置であるマークにおいて停止することが関係する、その場所で最初の艇は他艇の能力を奪うためにセーリング競技規則を用いることができ、同じチーム・メンバーが前方に帆走するようにする。
2. チーム・レーシングの現況
チーム・レーシングは、テンポの速いアクションとか挑戦を楽しむセーラーの間で人気を得て成長しつつある。チーム・レーシング・レガッタはしばしば大学とか中高等学校の間で開催される、それらはインターカレッジ・セーリング協会および中高等学校セーリング協会の中にチームを有している。加えて、多数のヨット・クラブはチームを有し、チーム・レーシング・レガッタにおいて互いに対坑し競技している。
チーム・レーシングは同一の艇で実施しなければならないので、チーム・レーシングで最も人気のある艇はワン・デザインのディンギまたはキールボートである。Optimist, 420, Vanguard 15, Firefly とか Flying Juniorがチーム・レーシングのために最もしばしば使用されるディンギである。また、キールボートについては、Sonarが人気を得つつあり、年間チーム・レース・フォーマットであるKirby Cup regattaにおいて使用されている。このスポーツの出生地であるU.Kにおいては、Uffa FoxによってデザインされたFirefly、12 フィート、2 セールディンギが最も一般的に使用される艇である。Fireflyはハイ・パーフォーマンスの特徴、例えばスピネーカーやトラピーズがないため使用には理想的である。まず初めに、十分に丈夫でない艇には問題がある、多くは不都合な点としてGRP建造や粗末な付属品が考えられる。しかしながら、繊細であるが有効な補強材のシリーズは、Spinnaker Sailing Club、Bosun Allenyne Copstakeの指導のもとに導入されて、彼はレースの後またレース中でさえ、自身で艇の欠陥の補修を定期的に調査していた。これらの補強材は、West Kirby Sailing ClubやSevenoaks Schoolを含むUKにおける他の主なチーム・レーシング・クラブによって後日採用された。
--続く--
TBC(To be continued) .....
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