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2011年6月30日 (木)

抗議における「ビデオの証拠」

抗議における「ビデオの証拠」
1_20204810364 先日あるレースの抗議審問において、被抗議艇から証拠として「ビデオの提出」がありました。

前日の審問において違反を認定され失格となった艇から『審問の再開の要求』があり、それにハンディー・ビデオが添付されたものです。
残念ながらその再開の要求は規則66の要件を満たしていないため、再開はできませんでしたが、その審問中に艇からビデオ証拠に関し質問があり、またJury間では信憑性につき議論がありました。

昨今のハイテク化の中で、写真、ビデオをはじめ、特にキールボートのレースではGPS2_k0000226516 Tracking systeme-yacht, PC 等の搭載は稀なことでありません。また、それらを抗議審問の証拠として提出されることも現実に増えています。(編集者も昨2010年だけで3度経験しました)
これからのJuryは、こうした新しい機器・技術に関する知識の習得も必要となるのでしょうね?

この機会にビデオ・写真に関して参考となる記事を紹介します。
1AC45s Optimist の興味深いビデオ
2. RRS2009-2012 Appendix M RRS付則M
3_img10291547488_2    M7 Photographic Evidence 
写真等の証拠
3. Judges Manual Edition 5 Dec 2008 ジャッジマニュアル
   
Photographic Evidence 
写真等の証拠

1. AC45s vs Optimist
Unruly FRIDAY, JUNE 24, 2011
Video Evidence
The use of video evidence in the protest room is a common and controversial topic. There are still judges who refuse to consider video evidence in any circumstance. To me, this is just dead wrong. That said, there are indeed very real risks in using video evidence without carefully considering its limitations. Here is a great example; watch the Optis fly past the AC45s upwind!
Matt Knowles


ビデオの証拠 
抗議審問ルームにおける「ビデオ証拠」の使用は、よくありがちで議論を呼ぶ話題である。どのような状況においてもビデオ証拠を考慮するのを拒否するジャッジがまだいる。私としては、これはまったく間違っていると思う。
ビデオの限界を慎重に考慮することなく、ビデオ証拠を使用する場合、実際のリスクが存在するのは事実である、と言われている。ここに顕著な例がある; アップウインドでAC45sを飛ぶように抜き去るオプティミストを見てください!
(編集者注:この風でもOptiはせいぜい2-3 knots/hour、一方AC45sは10 knots/hourを超えているであろう)



2. RRS2009-2012 Appendix M 
 M7 Photographic Evidence
写真等の証拠

写真とビデオ・テープは時として役に立つ証拠を与えてくれるが、プロテスト委員会はこれらの限界を認識し、次の点に注意するとよい。
 写真等の証拠を提供する当事者は、写真等を見る準備をする責任がある。
 ビデオ・テープからの情報すべてを引き出すためにテープを数回見ること。
 シングル・レンズ・カメラの遠近感は、ほとんどない。望遠レンズにいたっては、遠近感はまったくない。カメラがオーバーラップした2艇をコースに直角に捉えた場合、両艇間の距離を判断することは不可能である。カメラがオーバーラップした艇を正面から捉えた場合、オーバーラップが十分にある場合を除き、オーバーラップしているかどうかを見ることは不可能である。
Gpstrackingsystem_3 次の質問をすること。
   
 カメラは艇との関係でどこにありましたか?
   
 カメラ台は動いていませんでしたか?動いていた場合には、どの方向に、どのくらいの速さで動いていましたか?
   
 艇が問題の点に近づいたときに、カメラの角度は変わっていませんでしたか?カメラの視野を早く動かすことは、極端に変わって見える。
   
 カメラの視野は、終始制限されていませんでしたか?

3. Judges Manual Edition 5 Dec 2008 
 9.14 Photographic Evidence
写真等の証拠
写真とビデオ録画は、審問での証拠として受け入れられることができ、時には役に立ちうる。ただし、いくつかの制限と問題があり、これらのことを、ジュリーは理解しておくとよい。

Eyacht_3 ビデオまたは写真の証拠を用いる場合に、次の点がジュリーの助けになることがある。
・  ビデオ録画がジュリーに対して見せることなる場合、その当事者に、必要な機器を準備し、それを操作するために利用できるオペレーター(望ましくは録画をした者)を確保するのは、証拠を提供する当事者である。
・  ビデオの証拠を持って来る当事者は、審問の前にそれを見させておき、ビデオがジュリーの助けになると思われる理由を出させるとよい。
・  当事者がそのケースを述べた後に、ビデオを見るのが通常望ましい。
・  最初は意見なしに、その後証拠を持って来た当事者の意見をつけて、その後他の当事者の意見をつけて、録画を見るのを許可する。質問は、正式のやり方で当事者およびジュリー・メンバーから求めてよい。
・  シングル・レンズ・カメラの遠近感はほとんどない。望遠レンズにいたっては遠近感がまったくない。例えば、カメラがオーバーラップした2 艇をコースに直角に捉えた場合、両艇間の距離を判断することは不可能である。逆に、カメラが正面または背後から捉えた場合、オーバーラップが十分にある場合を除き、オーバーラップがいつ始まったか、オーバーラップが存在しているかさえ見ることは不可能である。この限界をしっかりと覚えておく。
*
・  ビデオ・テープを最初に見るのは、その場面に慣れるために用いる。カメラは艇との関係でどこあったのか?カメラと艇との角度は何度であったか?カメラ台は動いていたか?動いていた場合、どの方向に、どのくらいの速さで動いていたのか?艇が問題の点に近づいたときに、カメラの角度は変わっていたか?(カメラの視野を早く動かすことは、極端に変わって見えることに注意する。)カメラの視野は、終始制限されていなかったか?制限されていた場合、証拠の価値をどのぐらい下げているか?十分にその場面に慣れるためには、数回見る必要があることがある。必要な時間を取る。
・  典型的ケースを再生して、巻き戻すのに30 秒とかからないので、ビデオで与えられるすべての情報を引き出すために必要とされる位数多くビデオを見る。また、他の当事者がビデオが何を示し、何を示さなかったと思われるかを指摘するための同等の機会を確実に持てるようにする。
・  審問が終わるまで、機器をその場において置く。問題を解決するためにそのときにビデオがどんな事実を立証しているかを見直すために、協議の間ビデオ・テープを利用できるようにしておくとよい。また、ジュリー・メンバーの1 人が、他の者が気づかない何かに気づくことがある。
・  ビデオ・テープに過度の期待をしない。ほんのたまにのみ、偶然のカメラ角度からケースの中心となる事実をはっきりと立証する。しかし、1 つの論争の点を解決する以上のことは何もないとしても、そのことだけで正しい判決に達する助けとなる。

関連記事:2010-07-29An Imaginary Exercise for Protest Hearing -抗議審問・仮想問題-http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/an-imaginary-ex.html

2011-07-02追加: Tracking  Systemの使用制約に関する記事

IODA (International Optimist Dinghy Association)のWorld Championship, European's, North American's, Asian'sのレース公示には下記の記載がある。
3. CAMERAS AND ELECTRONIC EQUIPMENT
Boat may be required to carry cameras, sound equipment or positioning equipment as specified bt the Organising Authority. Information from this  equipment shall not be used by a boat as evidence in a hearing. This changes rule 63.6.

3. カメラおよび電子装置
艇は主催団体が指定するカメラ、音響装置またはポジショニング(位置)装置を搭載することを要求されることがある。この装置からの情報は(プロテスト)審問において証拠として使用してはならない。これは規則 63.6.を変更している。

近年レース艇にカメラとかポジショニング・システムを搭載させる大会が増えている。陸上で待機しているサポーターであるとか、遠く離れた母国からインターネットでレースを鑑賞する人々のために、レースの状況をいち早く、かつリアルに伝達し、また後日メディア用に情報提供をする目的からである。
ただし、このレース公示のように「ここから得られる情報をプロテスト審問における証拠として使用する」ことを禁じている場合もある。

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コメント

山岡さん、ご無沙汰してます。
バルクヘッドの平井です。いつも楽しみに読んでます。

ところで、今春、海外でオリンピック種目の大会を取材してきたのですが、最近のコーチボートではビデオ撮影は当たり前のようです。もちろんケースがあった時の証拠として提出するためです。現場では、ほとんどのチームのコーチが、全レースの全マーク回航を撮影するという、不思議な光景を見られます。

それと、少々意味は違いますが、昨年のマレーシア・モンスーンカップで、アンパイアボート等からリアルタイムで撮影したビデオ映像をジャッジの参考にするということをやっていました。ビデオ専門のアンパイアを陸上に待機させ、PC画面の映像をジャッジの参考にするといったものだったと思います。その後、ビデオジャッジのニュースは聞かないので、どうなったのかわかりません。

抗議にビデオを提出する例は、今後、日本でも増えそうな気がします(特にインカレとか…)

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平井さま
お粗末なblogを観ていただきありがとうございます。
1.2010年度の3回の経験は、国内のキールボートのレガッタでGPSのデータを証拠として提出された件と、あるクラスのレースでトラッキング・データをもとに抗議がでた件の2件です。もう1件は海外のレースでRCからビデオが提示されました。
本年度はblogに記載の先日のビデオ提出です。

2.アンパイアの件は、よくわかりませんが、『付則C マッチ・レース規則』の『C9.1 規則C5、C6、C7またはC8に基づき行われた判定に対する救済要求または上告を行ってはならない。規則66の3番目の文章を次のように変更する。「審問の当事者は、審問再開を求めることはできない。」』とあるように、特別なレースでない限り、通常は原則として“オン・ザ・ウオーターによる即時の判定が最終となる”ため、ご指摘のような話は聞いたことがありません。
マッチレースに詳しいアンパイアに聴いておきますが、とりあえず回答しておきます。

ご活躍をお祈りします。

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追伸
IODA World 2011ではNoRで次の条項を定めています。
「艇に主催団体が準備するカメラ、録音装置またはトラッキング・システムを搭載させ、陸上のサポーター等に実況中継するためです。ただし、これら装置から得られた情報はプロテスト審問の証拠としては使用できない。」

NoR  
3. CAMERAS AND ELECTRONIC EQUIPMENT
Boats may be required to carry cameras, sound equipment or positioning equipment as specified by the Organising Authority.
Information from this equipment shall not be used by a boat as evidence in a hearing. This changes rule 63.6.

ただし、コーチボート等が撮影するビデオ等を禁じている訳ではありません。

投稿: HIRAI | 2011年7月 1日 (金) 00時04分

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