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2013年2月12日 (火)

読者からの質問と回答 「プロテスト委員が利害関係者である場合」

1_coach_pupil読者からの質問:
私の場合教え子の出場するレースのジャッジをすることがあります。過去にありました。そこで質問です。
利害関係者として審問に参加できません。(規則63.4
しかし、インシデントを目撃していた場合、プロテスト委員会のメンバーは証人として証言することが認められています(規則63.6)。通常、証人は証言と質疑応答がすむと退席します(63.3(a))。
ところで、この規則63.3(a)には「プロテスト委員会のメンバー以外の証人は退席」という文言があり、また付則M3.27項の末尾には「プロテスト委員会に留まることができる」という文言がありますが、利害関係者であると同時にプロテスト委員会のメンバーであるジャッジは、留まれるのでしょうか。
利害関係者がプロテスト委員会のメンバーで証人となった場合、良心に基づいて証言することは当然な話ですが、RRSおよび付則の中で、この利害関係者であるプロテスト委員会のメンバーが、メンバーでなくなるということは明記されているのでしょうか。明記されていないと、利害関係者を排除するという規則63.4M3.27項末尾の文言とが矛盾することになりますが、如何ですか。
また、明確に目撃していたプロテスト委員会のメンバーが利害関係者の一人であったら、どうなりますか。このような場合、利害関係者であるプロテスト委員会のメンバーは、審問の席に留まれると解するのでしょうか。その根拠は?当事者への了解に関する規定は?
まあ、生徒の出るレースのジャッジはしない方が良いと言うことになりますか。(M.Y)

2_father_son編集者による回答:
よくルールブックを精査されており中々の難問です、また日頃ジャッジもされている関係者と云うことで慎重に解答を作ってみました

私の場合教え子の出場するレースのジャッジをすることがあります。過去にありました。そこで質問です。
利害関係者として審問に参加できません。(規則63.4

まず利害関係者とは?を整理しておきたい。

RRS定義:利害関係者には「プロテスト委員会の判決の結果、有利となるか、不利となる者、または判決に対して個人的に密接な利害関係を持つ者を利害関係者という。」とあるが、具体的にどのような者を指すのだろうか。

Dave PerryUnderstanding the Racing Rules of Sailingには『筆者の意見では、利害関係者としては、Parents (or offspring)(親または子)、Instructors or coaches(指導者またはコーチ)、Employers or employees(雇用者または従業員)およびSponsors or financial contributors(スポンサーまたは資金提供者)をそうとみなすことができる。通常、ヨットクラブとかヨット協会のメンバーとか同じ国籍の同僚セーラーは利害関係者とはみなさない。しかしながら、状況にもっともな道理があれば、これらの人々が利害関係者と判定されることがある。』と述べている。<付則N3.3: メンバーは、国籍を理由に利害関係者とみなしてはならない。>

3_employer_emplyeeまたUS Sailing Judges Committeeの資料では、Competitor(選手),Personal, business or family tie to a competitor(選手とつながりのある個人、職場、家族), Significant adverse relationship with a competitor(その競技者に著しい敵意を持つ関係者), Interest in a competing boat (including a syndicate) (競技艇の利害関係者), Contributions to a syndicate or campaign(シンジケートまたはキャンペーンの出資者)を挙げ、反面Membership in an OA or club(主催団体もしくはクラブのメンバー)およびGiving Teatimony(証人)は利害関係者ではないとしている。国内でよくある同窓OBOGも当然該当しない。参考にされたい。

よって、貴殿は当事者からまたプロテスト委員会からも、明らかに「利害関係者」であるとみなされるでしょう。

RRS63.4 利害関係者
プロテスト委員会のメンバーが利害関係者である場合には、それ以降、その審問に参加してはならないが、証人として出頭することはできる。プロテスト委員会のメンバーは、自らの利害関係の可能性に気付いたらできるだけ早く表明しなければならない。プロテスト委員会のメンバーが利害関係者であると考える審問の当事者は、できるだけ早く異議を申し立てなければならない。

利害関係者として自ら審問に参加しないと決めたのは規則63.4に従った適切な行動です。

>しかし、インシデントを目撃していた場合、プロテスト委員会のメンバーは証人として証言することが認められています(規則63.6)。通常、証人は証言と質疑応答がすむと退席します(63.3(a))。

4_sponsor_adidasgroupRRS63.6 証言の取得と事実認定
プロテスト委員会は、審問に出席した当事者と証人の証言、および必要と思われるその他の証言を得なければならない。インシデントを目撃したプロテスト委員会のメンバーは、当事者が出席している間に,目撃したという事実を述べなければならず、証言することもできる。審問に出席した当事者は、証言をするすべての者に質問することができる。その後、プロテスト委員会は事実を認定し、これを判決の根拠としなければならない。

RRS M3.2 証言を取る(規則63.6 7
インシデントを目撃したプロテスト委員会のメンバーに証言することを許可する(規則63.6)。ただし、当事者がいる時でなければならない。証言するメンバーは、質問をされることがある。インシデントについて知っていることで、判決に影響を与えるであろうすべてのことを話すように、注意を払うとよい。そして、プロテスト委員会に留まることができる(規則63.3(a))。

RRS63.3 出席する権利
(a) 審問の当事者、またはそれぞれの代表者は、すべての証言の審問の間出席する権利がある。抗議が第2章、第3章または第4章の規則違反を主張するものである場合、艇の代表者はインシデントの時に乗艇していなければならない。ただし、プロテスト委員会が別のことを決めるもっともな理由がある場合を除く。プロテスト委員会のメンバー以外の証人は、証言を述べる場合を除き、退席しなければならない。

>ところで、この規則63.3(a)には「プロテスト委員会のメンバー以外の証人は退席」という文言があり、また付則M3.27項の末尾には「プロテスト委員会に留まることができる」という文言がありますが、利害関係者であると同時にプロテスト委員会のメンバーであるジャッジは、留まれるのでしょうか。

5_cain_abel
ジャッジとしては、留まれません。
規則63.4(利害関係者)の第1文に、「プロテスト委員会のメンバーが利害関係者である場合には、それ以降、その審問に参加してはならないが、証人として出頭することはできる。」と明記されています。すなわち、該当のインシデントの審問においてはプロテスト委員会のメンバーから外されることを意味します。ただしレガッタを通してプロテスト委員会のメンバーから(自動的に)除外される訳ではありませんので為念。

>利害関係者がプロテスト委員会のメンバーで証人となった場合、良心に基づいて証言することは当然な話ですが、RRSおよび付則の中で、この利害関係者であるプロテスト委員会のメンバーが、メンバーでなくなるということは明記されているのでしょうか。明記されていないと、利害関係者を排除するという規則63.4M3.27項末尾の文言とが矛盾することになりますが、如何ですか。

●矛盾はしません。
繰り返しになりますが、規則63.4で「プロテスト委員会のメンバーが利害関係者である場合には、それ以降、その審問に参加してはならないが、証人として出頭することはできる。」とあり、M3.27項末尾の文言を満たしています。

>また、明確に目撃していたプロテスト委員会のメンバーが利害関係者の一人であったら、どうなりますか。このような場合、利害関係者であるプロテスト委員会のメンバーは、審問の席に留まれると解するのでしょうか。その根拠は?当事者への了解に関する規定は?

●たとえ目撃したとしても、それ自体が抗議として成り立ちません。
まず認識いただきたいのは、あるインシデントでプロテスト委員会のメンバーの一人が規則違反を目撃していたとしても、そのメンバーが利害関係者であった場合は、抗議することができません。
なぜならば、規則60.3で、「プロテスト委員会は・その艇の代表者ではない利害関係者からの報告に基づいて抗議することはできない。」と明記されています。すなわち利害関係者であるジャッジからの報告によってプロテスト委員会から抗議することはできない訳です。
よって「審問に加わる」以前の話で、ありえません。「証人となる」については前述のとおりです。

RRS60.3 プロテスト委員会は、次のことができる。
(a) 艇を抗議する。ただし、次のいずれかからの情報の結果として抗議することはできない。
  ・救済要求
  ・無効となった抗議
  
その艇の代表者ではない利害関係者からの報告
ただし、次の場合には艇を抗議することができる。・・・

●なお関連する情報として、抗議審問における、「プロテスト委員と証人の取扱い」に関し、ISAF International Judges’ Manualの「プロテスト委員会の抗議」の項に詳しい記述があるので参考にされたい。(長文のため文末にコピーを添付)

●当事者への了解に関する規定はとの質問ですが、規則63.4(上述)に基づき、抗議艇または被抗議艇からの異議申し立てが妥当であるとプロテスト委員会が判断した場合は潔くメンバーから外れることを推奨します。
また自ら表明することで、
プロテスト委員として「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」の姿勢を示し、レースに関係するすべての人からの信頼を得ることになる、と常々考えています。

RRSが錯綜しているがまとめると下図になる。(注:プロテスト委員は抗議者との二役を務めることができる)
Pc_interested_party

まあ、生徒の出るレースのジャッジはしない方が良いと言うことになりますか。

Jury_duty堅く云うなれば、そうゆうことになりますが、杓子定規に考え過ぎるのは如何なものか、が編集者の個人的な見解です。大会を取り巻く環境、ジャッジ要員の確保、主催団体の運営方針等々周辺の状況を鑑み、大人の対応が求められるのではないでしょうか? 大会参加者の誰もが公平・公正でないと判断される場合は辞退されるのがベターですが、そうでない場合はケース・バイ・ケースで対応されたら如何でしょうか? また大会はジャッジ以外にも種々の役割を必要とします、貴殿のような熱心な方を大会関係者は歓迎しています、他のジョブで参加されることを強くお薦めします。

余談ですが、メジャーなスポーツの代表であるあのサッカーでホーム・デシジョンが存在するのは歴然とした事実であり、そのためにもFIFAワールドカップなど国際試合では(ルールにあるか否かは別にして)対戦国国籍のレフリーが裁くことなどあり得ませんし、周りも許しません。
セーリングの世界でもホーム・デシジョンは当然ありますし、RRSには「国籍は利害関係に当たらない」と明記はされてはいるが、オリンピック等ではオン・ザ・ウオーターは別にして審問では「当事者の出身国のジャッジは除外する」措置がとられているようです。
本来ルールとはそうしたものであることを理解しなければなりません。法律があれば裁判官は要らない理屈になってしまいます。最後の判断を下すのは人です。ルール、ルールとあまり鯱ほこ張ばって、本来のスポーツの楽しさを奪うことにならないようにしたいものです。
Rules and Regulations are for the guidance of wise men and for the obedience of fools.
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K.26 Protest Committee Protests
  
ISAF International Judges’ Manual Version November 2011 K 19

A protest initiated by the protest committee under rule 60.3 has the same validity requirements as those initiated by the race committee. The protest committee must ensure that the validity requirements are met before proceeding with the hearing.
The chairman should ensure that the boat’s representative is aware that although one ormore members of the protest committee will present the evidence, it is the protest committee as a body that has initiated the hearing under rule 60.3. We recommend that members of the protest committee present their evidence from their normal positions seated around or behind the protest room table.
Should a witness who is a member of the protest committee leave the room while the protest committee makes its decision? Or should the member who is a witness leave the room with the protestee while the remaining members of the protest committee make their decision?
Such witnesses, who stay for the decision, must not give any new evidence after the parties have been dismissed. The members giving evidence are not interested parties. They are a part of an independent body, with nothing to gain or lose from the decision. Remaining as a part of the protest committee corporate body helps to portray the protest committee as an independent body with an interest in the fairness of the competition as a whole. Usually, witnesses who are part of the protest committee would stay in the room as part of the protest committee making the decision.
In cases where the chairman or the protest committee member or members who is the witnesses feels uncomfortable, the witness would leave the room when the protest committee begins its deliberations. Be aware that dismissing protest committee witnesses while the remaining members make the decision tends to portray protest committee members as individuals intent on protesting individual boats, and having a personal interest in the success of their protests. The practice of dismissing protest committee witnesses becomes embarrassing when all members of the protest committee witness an incident.
However, should the protest committee be convinced that the protestee feels genuinely and strongly that it would be unjust for the one or two protest committee witnesses to remain, then the protest committee witness should be dismissed for the decision. Rule N3.2 provides that the protest committee remains properly constituted as long as 3 members remain and at least 2 members are International Judges.

Www_ijreport_org K.26 プロテスト委員会の抗議 (訳文)
  ISAFインターナショナル・ジャッジ・マニュアル 2011

規則60.3 に基づきジュリーが発議する抗議は、レース委員会が発議する抗議と同様の有効性の要件がある。プロテスト委員会は、審問を進める前に、確実に有効性の要件に従がわなければならない。
委員長は、プロテスト委員会の1 人またはそれ以上のメンバーが証言を述べるが、これは規則60.3 に基づき組織としてプロテスト委員会が審問を発議しているものであることを、艇の代表者が確実にわかるようにするとよい。プロテスト委員会メンバーがプロテスト・ルームのテーブルのまわりかそれに向かってすわる通常の位置から証言を述べることを勧める。
プロテスト委員会のメンバーである証人は、プロテスト委員会が判決を作成する間、部屋を退出したほうがよいか? <編集者注:この文は、「メンバーである証人は、判決を作成する間、部屋に残るのか? 」が正しく、 leave stay 誤りであろう、以前のマニュアルではstayだった筈 それとも証人であるメンバーは、プロテスト委員会の残ったメンバーが判決を作成している間、被抗議艇と一緒に部屋を退出したほうがよいか?
そのような、判決作成のために残る、プロテスト委員会の証人は、当事者が退去させられた後に、新たな証言をしてはならない。証言をするメンバーは「利害関係者」ではない。彼らは独立した組織の一部であり、判決から有利になる、または不利になるものは何もない。プロテスト委員会の組織団体の一部として残ることは、全体として競技の公正に関わる独立の組織としてのプロテスト委員会を表現することを助ける。通常は、プロテスト委員会の一部である証人は、判決を作成するプロテスト委員会の一部として部屋に残る。
委員長、またはプロテスト委員会メンバーまたは証人となるメンバーが落ち着かないと感じる場合、証人は、プロテスト委員会が審議を開始する時に部屋から退出する。残りのメンバーが判決を作成する間、プロテスト委員会の証人を退去させることは、プロテスト委員会のメンバーが、個人的に被抗議艇の個人に注目している場合、その抗議の結果に個人的興味を持つ傾向があることを認識しているからである。プロテスト委員会の証人を退去させる慣習は、プロテスト委員会のすべてのメンバーがインシデントを目撃した場合に、まごつかせることとなる。
しかしながら、被抗議艇が1人または2人のプロテスト委員会の証人が残っていることが不公平であると純粋にかつ強く感じていると、プロテスト委員会が納得した場合は、そのときは、プロテスト委員会の証人を判決作成のときに退去させることを勧める。規則N3.2 では、3 名が残り、少なくとも2 名がインターナショナル・ジャッジである限り、残りのプロテスト委員会は適正に構成されていると規定している。

関連記事:2011-01-29「読者からの質問と回答 「抗議審問の利害関係者」 - Interested Party」http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-338c.html
Appeal_107_4
2013-03-20追加: ISAF IJ Committee Event Reportからの例(右上)
<プロテスト委員から除外>

「2013 Athens Eurolymp Week 2013-3-5」
The two sons of a jury member were competing in two different classes. The judge was excluded form any protest concerning the classes his sons was competing and did not do any on water judging on any of the two classes courses.
pdf:「www.ijreport.org_index.pdf」をダウンロード 「www_ijreport_org_index.jpg」をダウンロード



2013-09-30追加: US Sailing Appeal 107, Optimist 13979 vs Optimist 14949 (右)
<新しいプロテスト委員会で再審問>

A protest committee member whose child is competing in a race that includes the parties to the protest is an interested party, because the relationship between the parent and child is a “close personal” one. The protest committee member therefore will have a close personal interest in the protest committee’s decision, and therefore must not take part in the hearing.
pdf:「appeal107.pdf」をダウンロード

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