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2013年10月 1日 (火)

第33回J/24クラス全日本選手権2013 - 抗議あれこれ

Sign2013年921日から23日の3日間、新西宮ヨットハーバーで開催された「第33J/24全日本選手権」に参加した。
日本J/24クラス協会のwebsiteによれば、J/24全日本選手権は1881年に佐島マリーナにおいて第1回が開催され、本年で33回を迎えたことになる。

編集者がふとしたことからこのクラスの選手権に係わり始めたのが、13年前の第20回(2000)の日産マリーナ東海での大会であった。以来第22回(2002)和歌山マリーナシティ、第23回(2003)佐島マリーナ、第25回(2005)蒲郡市ラグーナマリーナ、第26回(2006)和歌山マリーナシティ、29回(2009)新西宮ヨットハーバー、第30回(2010)日産マリーナ東海と今回を合わせ都合8回の多きに亘りジャッジまたはレースオフィサーとして奉仕し、またこのクラスを通じて多くの知己を得ることができた。初めて世界選手権に参加したのもこのクラスである。こうしたことから、このクラスへの思い入れは一方ならぬものがあり、また今大会は編集者のホームポートでの開催であることから格別に力が入るのも気の所為だけではないのだろう。

さて、J/24 はクラス標語 "World’s Most Popular One-Design Keelboat" にあるように、キールボートとしては手軽であるが故に、世界的にも国内のレースにおいても参加艇数が多く、ワンデザインならではの熾烈なレースが展開されることで著名である。
J24_2011_protest_1その裏返しとして『プロテスト(抗議)の多さ』も知る人ぞ知る事実であって、ディンギ・レース顔負けの様相を今でも呈している。
その解決策・防止策(?)として、他のクラスではあまり見かけられない「得点ペナルティー(Scoring Penalty 規則44.3, 黄色旗ペナルティー)」を適用したり、「簡易裁定方式(Arbitration System)」を採用したりする対策を採ってはいるが、少なくとも世界選手権においては一向に減少する気配はないようである。
尚、国内選手権では何故か「得点ペナルティー」(下記*)も、「簡易裁定方式(Arbitration System)」(下記**)も適用していない。

国際J/24クラス協会のウエブによれば、昨2012年のニューヨーク・USA大会では27件(参加96艇)、2011年のブエノスアイレス・アルゼンチン大会では参加艇が60艇の少なさにも拘らず53件の抗議審問が実施されている。(右図:その一部)
両大会のジュリーがたまたま編集者の知人であり、彼らの弁を聞くと皆んなフラフラ、でも満更でもない”様子。
編集者が初めて世界選手権に参加した2000年のニューポート・USA大会においても旧いメモによると60件を超えた抗議があり、連夜の居残りであった。スポンサー提供のパーティー<東海岸ニューポートの有名レストランを毎夜替えてのパーティー、訪問前から大いに楽しみにしていたのだが・・・・・>に一度も参加できず、差し入れのサンドイッチで空腹を凌いだことを思い出す。
J24_2011_protest_4_2また2001年の西宮でのワールドでも同じこと。イタリア、イギリス、バーミューダから招へいしたジュリーの方々に日本らしい食事を味わってもらいたくて、折角準備した「寿司」「お好み焼き」「たこ焼き」「おでん」等を味わっていただく余裕がなく、ヴォランティアーの方々に申し訳ない思いをしたのも忘れられない。
その際「余りにも抗議の多さに」イギリスからのジャッジが「クレージー!」とぼやいていたのが強く記憶に残っている。大会後もお付き合いが続いたイタリア、バーミューダの両ジャッジはすでに鬼籍に入ってしまった、合掌。
あれから十余年の歳月を経たが、世界のJ/24では相変わらず『抗議合戦』が続いているようで、審問の経験を増やすといった面からは羨ましいレガッタと云ったら失礼になるだろうか?

さて幸いなことに、本日本選手権では3日間7レースで、合計5件の抗議のみであった。セーリング・コンディションにも左右されるだろうが、近年国内ではJ/24に限らず抗議件数は減少傾向にあるようで、セーラーにとっても、またジュリーにとってもHappyなことである。
抗議5件の少なさではあったが、第2章(航路権)に関わる艇対艇の抗議のほかに、キールボートのレガッタでは珍しい事例や、規則の解釈に関わる事例といったユニークなものがあったので紹介しておきたい。
ただし、審問のディテイルをこの場に公開することはできないので、代わりとして関係する規則の解説を述べておく。どのような抗議があり、どのような判決がなされたかは、下記の解説から読者各位で想像していただきたい。
抗議①:規則44.1, インシデント時のペナルティー:ペナルティーの履行のタイミング
抗議②:規則42, 推進方法
抗議③:プロテスト委員が利害関係者である場合

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Appeal_60抗議①: 規則44.1, インシデント時のペナルティー:ペナルティーの履行のタイミング
US Sailing APPEAL 60
Flying Scot 36 vs. Flying Scot 92

規則44.1, インシデント時のペナルティー:ペナルティーの履行
規則44.2, インシデント時のペナルティー:1回転と2回転ペナルティー

規則44.1は艇が規則に違反したかどうかをじっくり考えるための時間を与えてはいない。艇が規則に違反したとあまりにも遅く決断した場合、規則44によって定められたペナルティーはその艇に有効とならない。
APPEAL 60 pdf: 「appeal_60.pdf」をダウンロード
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抗議②: 規則42, 推進方法
ISAF Rule 42 Most Common Breaches - 規則42もっともよくある違反

風下レグ 
1.パンピング 
許される動作:
 
・ 効果的なコンディションにおいて、艇をトリムするためのセールのトリミング-パンプ2
・ サーフィング(急速に加速しながら波の風下側を下ること)またはプレーニングを開始するために、ただし艇のサーフィングが波の風下側に急いで加速しなければならない場合に限定し、一波またはガスト(風の一吹き)につき一度に限り、セールのパンピング? 42.3(c)
 微妙なコンディションのときのプレーニングまたはサーフィングをしようする1 回の試み、たとえ失敗したとしても-パンプ7
禁止される動作: 
 リーチの繰り返しのフリックを生じさせるボディー・パンピング-パンプ6
 セールをファンするためのトリミング-パンプ1
42_rock_pany_2 プレーニングまたはサーフィングを開始するための1 回のパンプ、および艇が他の波に到達する前のセールの二度目の引き込み。横からが最も監視される、なぜなら二度目のパンプが波と波の間でなされ、プレーニングまたはサーフィングを開始しないのが見やすいからである 
・  サーフィングまたはプレーニング時のセールのパンピング 
証拠の蒐集: 
 サーフィングまたはプレーニングのコンディションであるか?
 サーフィングまたはプレーニングを開始するため一波またはガストにつき一度のパンプか?
 艇が、サーフィングまたはプレーニングの間にパンピングしているか? 
 トリムおよび緩めが、風の振れ、ガストまたは波と合っているか? 
 繰り返しのトリムおよび緩めが、セールをファニングさせているか?
 リーチのフリックと身体の動きを関連づけできるか? 


解説記事:2010-09-08ISAF's Rule42 Library (Propulsion:推進方法)http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/isaf-rule42-p-1.html
2011-02-06Rule42 Most Common Breaches 470 - 規則42もっともよくある違反470クラス」http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/isaf-rule-42-mo.html
2011-03-12Rule 42 Most Common Breaches Optimist - 規則42もっともよくある違反オプティミストクラス」http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/rule-42-most-co.html 
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Hatfields_mccoys_2抗議③: プロテスト委員が利害関係者である場合

RRS定義:利害関係者には「プロテスト委員会の判決の結果、有利となるか、不利となる者、または判決に対して個人的に密接な利害関係を持つ者を利害関係者という。」とあるが、具体的にどのような者を指すのだろうか。
Dave PerryUnderstanding the Racing Rules of Sailingには『筆者の意見では、利害関係者としては、Parents (or offspring)(親または子)、Instructors or coaches(指導者またはコーチ)、Employers or employees(雇用者または従業員)およびSponsors or financial contributors(スポンサーまたは資金提供者)をそうとみなすことができる。通常、ヨットクラブとかヨット協会のメンバーとか同じ国籍の同僚セーラーは利害関係者とはみなさない。しかしながら、状況にもっともな道理があれば、これらの人々が利害関係者と判定されることがある。』と述べている。<付則N3.3: メンバーは、国籍を理由に利害関係者とみなしてはならない。>
またUS Sailing Judges Committeeの資料では、Competitor(選手), Personal, business or family tie to a competitor(選手とつながりのある個人、職場、家族), Significant adverse relationship with a competitor(その競技者に著しい敵意を持つ関係者), Interest in a competing boat (including a syndicate) (競技艇の利害関係者), Contributions to a syndicate or campaign(シンジケートまたはキャンペーンの出資者)を挙げ、反面Membership in an OA or club(主催団体もしくはクラブのメンバー)およびGiving Teatimony(証人)は利害関係者ではないとしている。国内レガッタでよくある同窓OBOGも当然該当しない。

解説記事:
2013-02-12読者からの質問と回答 「プロテスト委員が利害関係者である場合」http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-4234.html
2011-01-29「読者からの質問と回答 「抗議審問の利害関係者」 - Interested Partyhttp://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-338c.html
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(*)得点ペナルティー(Scoring Penalty 規則44.3,黄色旗ペナルティー)

Yellow_big_2J24_scp_2履行の方法は、第2章の規則に違反したかもしれない艇は、インシデント(ケース)の後、2回転ペナルティーを行うことなく、ただちに黄色旗を掲揚し、フィニッシュするまで掲げ続け、帆走します。そして、フィニッシュ後相手艇をレース委員会に報告しなければなりません(規則44.3(b))。
尚、抗議する側の艇は、通常の抗議と同じようにプロテストの声を掛け、赤色旗(通常は要求されている)を掲げます。
レース後、規則44.3(c)に基づき、成績の変更がなされます。すなわち、帆走指示書に順位の数が記載されていない場合は参加艇数の20%を順位に加算例えば100艇参加のレースで、その艇(黄色旗を掲げた艇)が12位でフィニッシュした場合、12+(100×20%)=32位とします。90位でフィニッシュした場合は、計算では90+(100×20%)=112位となりますが、この場合はDSQ等と同じ101位が与えられます。(他艇の得点は変更しない)

解説記事:
2009-05-03「読者からの質問と回答 「得点ペナルティー:SCP 最終編 - J/24 Understanding the SCORING PENALTY」」 http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/--j24-under-sta.html
2009-04-23「読者からの質問と回答 「得点ペナルティー:SCP 続編」」http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/scp-65ea-1.html
2009-04-22「読者からの質問と回答 「得点ペナルティー:SCP」」http://ventoorientale.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/tesy.html
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(**)簡易裁定方式(Arbitration System

ArbitratorArbitrator_2_2ISAF Judges' Manual
裁定(Arbitration


抗議の裁定は、完全な抗議審問の形式でなく抗議を解決するプロセスである。裁定は、抗議に関係したセーラーと裁定人として努める経験豊富なジャッジ1名または2名の間の単なる短いミーティングである。すべての当事者が、参加することに同意しなければならず、当事者の誰かが拒否した場合には、裁定を続行することはできない。セーラーは水上で起こったことを裁定人に話し、裁定人は、違反があればどの艇が規則違反したかについて判定を行う。規則違反した当事者は、帆走指示書に明示されている「軽減されたペナルティー」を受けることができる。裁定人の判定が受け入れられた場合には、抗議者は抗議を取り下げて、抗議が正式にプロテスト委員会により審問される前に、紛争が解決される。裁定の主たる目的は、完全な審問プロセスを必要としないケースに関して、抗議のプロセスを単純にし、スピードアップすることにある。

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